Translation by Rami Suzuki.
マンチェスターでBalearic炎を守り続けているMoonbootsが、初めてのコンピレーションをリリースする。AficionadoパーティやレコードレベルをJason Boardmanと共同創設した彼は、過去にもIs It Balearic? と Music For Dreamsのためにベスト集を作ったことがある。しかし今回は、ひとつのカタログに縛られることない彼自身のセレクションだ。時間とジャンルの切れ目を感じさせず、多様な曲を纏め上げている。この1時間以上の作品を聴いた僕は、落着きの極致にある。挑戦的な(好戦的な?)水平セレクション。ピアノ、弦楽器、モダンクラシカル、鳥の声、チェロがうずく。TropicaliaサンプルがアコースティックなIndieと交わる。色あせた幼児期のを思い出。たそがれのエレクトロニクスとホワイト島のジャズ。ディズニーのテーマソングに隠された核警告。Breakbeats とEasy-Listeningの出会い、ウェールズ民謡のオーケストラとラブソング。タブラとギターの瞑想。ソウルの少年がジャズマスターに変身。オアシスのサイドマン。遠い昔のトランスの星。グラミー賞にノミネートされたECMソロリスト。Carl Orf とThe KLFには脱帽。14曲の内、5曲は今回始めてレコードという媒体に収められ、さらに4曲は過去にリリースされたことがない。このような事実も、Moonbootsが舵を取ったと賞賛されるべきこのコンピレーションの価値を、高めていると思う。
AficionadoではなくてMusic For Dreamsとコンピレーションを出するのは何故?
AficionadoではコンピレーションやアーティストのLPのリリースは考えたことがない。MFDのKennethが18ヶ月前に、今回のアイディアを僕に提案してくれた。彼等はいつもすばらしい音楽を出すから、良いマッチになると思った。
Kennethとの出会いは?知り合ってからどのくらい?
何年も前にEastern Blocで僕が働いていたときが、最初のコンタクトだった。電話で彼にレコードを売っていた。実際に顔を合わせたのはコペンハーゲンを2014年に訪問していたとき。彼はクレイジーな男だ。
今回はMoonbootsの定番を12曲選んでいるわけではない。僕が知る限り、コンピレーションの中で君が頻繁にプレイしてるのは1曲だけだ。目的は?特にコンセプトはあった?コンピレーションの曲選びは難しかった?
僕がよくプレイするのは確かにColoramaだけだ。今回集めた曲の殆どがCDでしか存在しないこと、それからそもそもリリースされていないのが理由だ。去年のJuno’s chartトップ10みたいなBalearicのコンピレーションは作りたくなかった。それが悪いとは思わないけど、今回は面白くて、聴いたことのないやつを選びたかった。かつ、アルバニアのノーズフルートみたいな激レアではなく。
君のセレクションは、辛抱強い観客にとっては宝物だ。ピアノとか弦楽器は、モダンクラシカルとかニューエイジとして片付けられやすいけど、君の選んだ曲からは聴いているうちに特別な世界が開かれる。最初僕は「既に同じような曲持っている」と勘違いした。でも曲の真ん中らへんで頷きはじめて、自然に「エッセンシャル」という言葉が口をついた。どうやってこういう曲を見つけたのか、不思議に思う。そして君は毎日何時間音楽を聴いているのか。「勝者」を見つけるために。
ありがとう。昔は、今より長い時間音楽を聴いていた。昨日は休暇を取って、ネットで何時間もいろんな音楽を掘り起こした。自宅の二階にある「レコード店」からも、美しい発見があった。自らのコレクションには、たまに凄い聴き甲斐を感じる。それから今の仕事場まで僕は1時間歩くのだけど、音楽を聴くにはもってこいだ。音楽は外で聴いたほうがいい。
Ben Morrisの曲は、僕にとって特に印象強い。他の曲よりダウンビートだ。今回のセレクションには、メッセージが込められている?
笑 特にない。多くの曲がメランコリー(もの哀しい)よね。
採用したかったけど使えなかった曲はあった?
いくつか。この問題は、コンピレーションでは避けて通れない。当初はいろんなバージョンのラブソングを組み入れたかったけど、ラベルの対応が遅くて作戦変更。最終的に出来上がったリストには、とても満足している。
僕は最近、レコードをいろんなところから集めたい欲望から目が覚めた。自分のレコードを売ったことはある?レコードを置くスペース、足りている?
A: 本当にさ~。家は結構大きいからラッキー。ギリギリ一部屋に収まっているかな。いつも溢れ出てもいるけど。整頓は苦手だから、永遠に見つけられないレコードを探しているよ。
オンラインのミックスを止めてからかなり久しいけど、Aficionadoや今回のようなコンピレーションで、DJの仕事も増えた?
増えていない。オンラインのミックスには、大きな挫折感を抱いた。大勢の知らない人からブログのためのミックスを要求されて、現代社会の特徴というか、誰もがすべての曲のi-dを求めてきているように見えた。協力しないと怒ったりして。まだミックスは持っている。殆どはテープ。誰のか判らない曲が入っている。全部の曲を知ることは、やはりできない。
Aficionadoパーティは、確かもう直ぐ20周年。なにかお祝いを企画している?
そう。長い、でも信じられないほど面白い20年間。お祝いは必ずする。もう直ぐ計画をオープンにする。
今回のセレクションに選ばれた曲の背景を。
Rishi – Simple Trust
何年も前にPhil (Mison)から貰った、デンマークのニューエイジCDから。彼はそのCDの中の他の曲が好きだった、僕はこの曲の長さを愛している。美しく盛り上がって、かつ長いからトイレの曲として完璧。
David Darling – Cello Blue
ニューエイジを聴いているとき、YouTubeで見つけた。サイドバーにポップアップして、興味を持ったので聴いてみた。アクアチェロの最高峰といえる曲で、僕のリニアなミックスでは、いつもi-dを依頼される。
July Skies – Softest Kisses
短いけど、とても愛らしい。Antonyはいつも、本当にブリリアントな英語の曲名をつける。Dreaming of Spiresのアルバムで最近再リリースされた、少し長めのバージョンも聴いてみる価値がある。
Begin – Names In The Sand
僕は、驚くような音楽を創る友人に恵まれている。Jim (James Holroyd)は素晴らしい才能の持ち主だ。だから彼の曲は、このコンピレーションに入れなくてはいけなかった。彼からこの曲のデモを3年前に貰ったとき、その日すぐにバーミングハムで聴いた。初期段階のその時代でも、既にブリリアントだった。彼にはもっとリリースしてほしい。莫大な宝ものを持っている。あまり知られていないけど、Jimと僕は7インチを90年代に一緒にリリースしたことがある。あまりにもレアかラビッシュなので、Discogsでさえリストしてない!
FRM – Janne
謎に包まれたスウェーデン人達。Is It BalearicのTimmが、12インチでリリースされたMagmaの始めの方の曲を聴かせてくれたのを覚えている。スペースアウトされたあの音が大好きだ。Aficionadoで彼等の素晴らしいE.Pをリリースできたのは幸いだ。今でも僕のお気に入りのリリースのひとつ。それから今年リリースされたHorisontal MamboというLPもマジで良い。
Blank & Jones – My Island
アコースティックギターについては、かなりのこだわりがある。Piet (Blank)が三月ごろ送ってくれた。当時、コンピレーションはもっと早くリリースされる予定だった。この曲を入れることはエッセンシャルだ。クリスマスに出てくるレコードだけど、見事な夏の曲!
Ben Morris – Gissningsleken
7インチでリリースされたJunk Yard Connections、さらなるスウェーデンの業績だ(FRM参照)。さっきロブはダウンビートと表現していたね。間違いなくメランコリックだけど、ボーカルの音が醸し出す50年代のレトロ感も好きだ。
Gryningen – Från Andra Hand Till Stränderna I Nice (Mike Salta edit)
これは、とても恋しい友人のSibaのために入れた。最初にこの曲の延長バージョンをプレイしたのは二年前で、場所はクロアチアの素晴らしいLove Internationalだった。今でも覚えている。彼女は走ってきて「あんた、あんた、これ私必要」って言うんだ。せっかくレコードに収めたのに、それを彼女と聴くことができないのは本当に残念だ。
Colorama – Anytime
Carwynは天才。AficionadoでHapus?と凄いBendith E.P.の両方を今年リリースできたのは幸運だった。この曲では、彼はWelsh Burt Bacharachのようだ。
Natureboy – Love Song
Lesley Duncanの “Love Song”は、カバーバージョンを集めている。なぜか判らないけど、あまりにも深掘りしたから今更止められない。Instagramで、僕の中毒度合いが確認できる。このバージョンは、マイクロプレスされたCDでリリースされたから、しっかりとしたレコードで世に出すことが適切に思えた。好きだ。Pink Floyd的な響きがある。
Bombay Hotel – Between Leaves
90年代にPhilに感化された、もうひとつの曲。最後の最後に追加した。驚異的なNordsø & Theil LPを今年の初旬から何度も聴いている。この曲には彼等も関与している。でもレコードとしては、まだリリースされてない。コンピレーションに入れることができて、とても嬉しい。
Paul Hardcastle – Moments in Time
1985年、ブレックファーストのテレビで、19を初めて聴いたことを覚えている。UKチャートで1番になったばかりで、その時は、僕のマインドを爆破された。32年後、彼の作品の一曲を僕のコンピレーションに入れた。これは跡に出た彼の‘smooth jazz’の化身だ。安っぽいDancing Fantasyのように聴こえるかもしれないけど、僕はこの曲を愛している。
Matt Deighton – Tannis Root
美しいジャズの影響を受けたフォークだ。Mattがこれを収録したときは、Nick Drakeをちょっと聴いていたのかも。いいことだよ。
Swan and the Lake – Waiting for Spring
僕のお気に入りのひとつ、MFDアーティスト。この曲のオリジナルが好きで、Kennethがインタープレテーションを送ってくれたとき、コンピレーションに入れることを即決した。あのギターは、KLFのチルアウトを思い出す。いつ聴いても良い。僕にとっては、今回のLPを完成させる完璧な最後の曲。
Moments In Time Complied by Moonboots is released on CD this week. The vinyl should be in shops after the weekend. Distinctive artwork by the lovely Sarah Salkeld.