川崎市在住のCalmこと深川清隆は、30年近くもDJや音楽制作を続けている。親しい友人たちとの小さな集団で作曲し、創作する。このコラボレーションによる最新の成果は、CalmのレーベルMusic Conceptionからリリースされた不思議なアルバム「Quiet Music Under The Moon」で聴くことができます。2008年、CalmはイタリアのインプリントHell Yeah!とチームを組み、一連のヴァイナルリリースとリミックスプロジェクトを行いました。Hell Yeah!の創設者であるマルコ・ガレラニは、Calmを「先輩」あるいは「先生」と呼び、Calmの音楽をより多くの、そして国際的な聴衆に届けることを使命としています。今月は、Jimi Tenorとの共同制作で、DigidubのマエストロTapesとGary “Vendetta Suite” Irwinによる高品質なリワークを含む “Big City Takes” E.P.がリリースされます。
日本以外では、Calmはおそらく彼のチルアウトサウンドで最もよく知られています。しかし、東京の「Sunset The Marina」や鹿児島の「Afterglow」などのイベントで、このスタイルで頻繁にプレイする一方で、青山ZEROでロングランのダンスパーティー「Bound For Everywhere」を主催するなど、Calmのルーツはハウスやテクノにあるのだという。ここでは、そのルーツに迫り、いくつかの質問に答えてもらった。
ご出身と現在のお住まいを教えてください。
出身は東京から飛行機で西に1.5時間、九州は熊本。現在は渋谷から地下鉄で17分の川崎です。
音楽制作を始めたのはいつですか?
高校2年生の時に初めてバンドを組み、その時から作曲やアレンジをやってました。
音楽を作り始めたきっかけは、どのような音楽だったのでしょうか?
Beatles, John Coltrane, Miles Davisが最初のインパクトで、Talking Heads, Beastie Boys, Cars, The Smith, Kool & the Gang,そしてdance musicが周りを固めていました。
音楽一家のご出身ですか?
両親は普通の公務員でした。
正式な音楽教育を受けているのですか?
一度も受けたことないです。親には感謝しかありませんが、唯一不満を言うとしたら、何故ピアノを習わせてくれなかったのか!ということです。
あなたの作る音楽は、とてもチルなものです。ダンスミュージック、ハウスやテクノにはまったことはありますか?
先ほども述べたように、TechnoやHouse Musicは自分の皮膚みたいなものです。80年代、90年代初頭多感なティーンエイジャーとして生きたい音楽好きで、Techno, Houseを通過しなかった人がいるのでしょうか?現在でも自分自身のパーティー “Bound for Everywhere”@Aoyama ZeroではダンスなスタンスでDJをやってます. Calm presents K.F. “Shining of Life”はいまだにbandcamp上で売れています。
どのクラブに行きましたか?どのDJが好きでしたか?
20代の頃はいたるところに出没していました。あらゆるジャンルのパーティ。最終的にAoyama Zeroの前身 “Loop”という箱は好きでしたね。DJ Noriさんがいつも回してましたから。
でも最終的には札幌のPrecious Hallに全て持っていかれました。最高の箱。最高のローカルDJ達。全てが東京や他の都市にない素晴らしいものだと感じたから。
ご自身のレーベル「Music Conception」を立ち上げようと思われたきっかけは?
周りに才能あるミュージシャン、バンド、プロデューサーが集まってきたので。それでは彼らの才能を世の中にわかってもらおう!という気持ちでスタートしました。
ご自身の音楽をどのように表現されますか?
FAKEです。何一つ本物ではないと思ってます。日本人はFAKEから改良を重ね素晴らしい物を作り出す人種だと考えてます。私も日本という場所で育ってきた人間ですので、是非それにあやかりたいです。
あなたの音楽は、夕日を意識して作られているようですね。イビサ島やカフェ・デル・マールに行ったことはありますか?Jose Padillaに会ったことがありますか?Phil Mison、Cantoma に会ったことはありますか?
これもFAKEの続きです。海外のサンセットパーティーには一度も行ったことないです。Phil は2002年頃だったと思うのですが、デンマークのロスキルドフェスティバルRoskilde Festivalで初めて会いました。Joseは一度も会ったことないです。JoseとDavid Mancusoは私の選曲眼を自由にしてくれた人たちです。Joseの全盛期のCafe Del Marでのプレイを聴いてみたかったです。
最近、 Jon Sa TrinxaとDJをされたそうですね。あれはどうだったんですか?
彼は人を楽しませることが上手で、それが大好きなんだなと思いました。少しチルから脱線する場面もありましたが、日本人には無いリゾート感覚の選曲だったと思います。個人的にはもう少しロマンチズムがあれば良かったなと。
作曲にはどれくらいの時間がかかるのですか?
早いときは1日3~4曲作りますよ!
最新アルバムには何かストーリーがあるのでしょうか?月に捧げているようです。
2021年に産まれた私の息子と昨年亡くなった私の母に捧げています。彼ら同士はこのコロナの状況もあり一度も会うことが出来ませんでした。喜びと悲哀、美しさと静けさ、過去と未来、涙と笑顔、全ての陰陽(Ying Yang)がコンセプトです。太陽があって月が輝く。ちなみに私の息子の名前は月音(Tsukito)と言います。
お気に入りの機材や、制作の中心となっているものはありますか?
ノートブックとApple Logic Xがあれば永遠に曲を作れます。世の中で人気の機材や高い機材とかにはあまり興味ありませんが、自分が目指す音色や音質のものがあればすぐに試してみますね。
結局何を使うかではなくどう使って音楽を作るかですから、流行りには興味なく、Logic X, Juno 106, Antelope Audio Amari, Focal Professional Shape65, Wuritzerがもう何年もいつも変わらず制作ルーム鎮座して活躍しています。
アルバムに参加している他のミュージシャンについて、もう少し詳しく教えてください。柴田敏孝、加藤雄一郎、杉本智和、Kakuei。どのようにして知り合ったのですか?皆さんは昔からの友人ですか?
皆20年来の友人達です。ジャズをベースにしている人が多いです。でも皆頭が柔らかいから色んな音楽へ興味を持ってプレイしてくれるので、これまでずっと一緒にやってこれたのだと思います。ライブのときも彼らと一緒です。
同じ志を持つアーティストのコミュニティがあり、お互いにサポートし合っているのでしょうか?
正直な話、日本では口約束で終わることが多いです。日本語で社交辞令といいます。コミュニティというサイズ感になるには相当な時間と忍耐が必要です。その前に分裂することが多いかもしれません。
新曲はどこで購入していますか?
コロナ後は通販が多くなりましたが、通常は東京近郊のレコードショップ、または音楽を置いてる店で買うことが多いです。あとはbandcamp。いまだに99パーセントがVinylです。コロナ前はホテルやカフェのBGMの選曲をしていたので、CDやデータを沢山買ってましたが、コロナで一気にその仕事がなくなり、CDやデータを買う機会が減ってしまいました。
新しいライブを見るために足を運ぶ会場があれば教えてください
恵比寿Liquid Roomが多いです。
新進気鋭のアーティストで、ぜひチェックしてほしいアーティストはいますか?
ピチピチの新進気鋭ではないですが、Valentina Magalettiの素晴らしい仕事っぷりには頭が下がります。
好きなアーティストがいれば教えてください。
沢山いすぎて困ります。長々と書けないので敢えて一人だけあげるとするとPharoah Sanders。強さと優しさが同居していて、突き放すような曲もあれば優しく包み込むような曲もある。困ったときはPharoahを聴くと解決することが多いです。
Marco と Hell Yeahとどのようにつながったのでしょうか?
Marcoさんの奥さんのMariさんから突然メールが来ました。初めましてみたいな。そこに日本盤でしかアナログをリリースしていない”from my window”のアナログを持って斜に構えたMarcoさんの写真が添付されてました。日本オンリーで300枚しかプレスしてないのによく持っているなと関心しました。それで今度日本に行くからみたいな感じで、、、あとはもうズルズルと彼の人間性に引っ張られているというイメージです。
Hell Yeahの中でお気に入りはありますか?
これも沢山ありますね、、、あえてこれを選ぶという感じだとBalearic Gabbaシリーズの2番、Enzo Elia “Balearic Gabba Edits 2” がお気に入りです。ただ単にエディットするだけでなく、色々プラスして曲を構築していることが好きです。
イタリアのHell Yeah!に行ったことがありますか?また、そのような予定はありますか?
行きた~い!!!
鹿児島のサンセットレジデンス「Afterglow」について教えてください。このセッションはいつから行われているのでしょうか?また、どのように始まったのでしょうか?今年も開催されるのでしょうか?
まだ8年ほどの幼児のようなパーティーですが、東京新木場で年二回行われてる”Sunset The Marina”と共に、今自分にとってとても重要なパーティーです。海外も含め様々なゲストDJと僕で構築されるSunset The Marinaとは違って、afterglowは私が一人でオープンからラストまでプレイします。一度だけMarcoさんにゲストでプレイしてもらいました。現在は太陽が海に沈む素晴らしい景色が見える温泉施設で秋に開催されています。もちろん今年もやると思います。パーティー中はただただ何もせず音楽や食事、会話、ときに温泉を楽しんでもらえたらという考えで開催しています。鹿児島市内から車で2時間くらいかかるかなりカントリーサイドにある場所ですが、毎回会場でゆったりできるような程よい人数が集まって来てくれています。ちなみにこのあたりのエリアは日置市というところがメインで、漢字だと日(太陽)置く(沈む)という、昔からサンセットを意識した人たちが住んでいたエリアなんだと思います。詳しくは毎回レポート動画が上がってますので、そちらをチェックしてみてください。
他にレギュラーギグやDJレジデンスはありますか?
毎月第1日曜日19:00~23:00、渋谷Bar Musicでのリスニング主体のDJ、偶数月第3日曜日17:00~22:00、青山Zeroでのダンスなパーティーが自分のレギュラーパーティーです。
日本のフェスティバル・サーキットでとても人気があるのは知っています。フェスでのライブは予定されていますか?
依頼が来れば考えます。ライブはしばらくお預けです。子供がもう少し大きくなってからですね。2027年はデビュー30周年です。その前にはライブも復活したいところです。
フェスティバルに出演するときは、DJ、ライブ、またはその両方を行うのですか?
それはフェスティバルがどういう配役で私をブックするのかによりますね。DJの方が多いですけど。
現在、何か新しい音楽を制作していますか?
自分の制作とは別にマスタリングの仕事もしてますので、常に新しい何かに触れています。もちろん自分自身の新しいアルバムの制作もスタートしました。”Before”→”Quiet Music Under The Moon”ときて次は”After”というアルバムです。
2023年の予定は?
子育てとの兼ね合いもありますが、もっともっと多くの素晴らしいレコードと出会いたい。それを沢山浴びたい。その影響で自分でもまだ作ったことがないような音楽を作ってみたい!あとは誰にも知られずに変名でこっそりと変な曲をリリースしてみたい!
Calmの『 Quiet Music Under The Moon』がMusic Conceptionからリリースされました。ジミ・テナーとのコラボレーション作品「Big City Takes」(バンバン・トン・トンのレビューが間もなく掲載されます)は、 Hell Yeah!